キャッシュレス革命への足音

1.世界のキャッシュレス決済の導入状況と日本の現状
政府は「日本再興戦略2014・2016」をきっかけに、2020年東京オリンピックを視野にキャッシュレス化を推進している。「未来投資戦略2017」では2027年までにキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目標としている。そもそも日本は海外と比べキャッシュレス決済の比率が低いといわれている.

韓国がとびぬけて高く、そのあと中国が続き、日本はその他先進国やインドよりも低い18.4%にとどまっている。キャッシュレス決済比率が高いということは裏を返せば現金決済の比率が高いということである。確かに日本ではレジで細かく小銭を数えて支払いを行う光景を当たり前のようによく見るが、日本で現金決済がまだ主流となっているのにはそれなりの要因が考えられる。一つ目は流通する日本円の現金に対する信用力が高い点だ。海外では偽札が多く出回っていたり、手渡した現金を店員が懐に入れてしまったりといったこともあるが、日本ではそういったことはまれである。基本的に自分が持っている現金に対して、それが偽物であるかどうかを疑うことはない。逆に海外では現金に対する信用度が低いため、現金以外の決済手段の方が支払うほうも受け取るほうも安心安全なのだ。二つ目は、現金を入手するインフラが整っているということだ。日本では銀行ATMが多いため必要な時に容易に口座から出金することができるが、海外、特に新興国では金融インフラが整備されていないため現金を引き出す必要のないキャッシュレス決済が急速に広まっているのである。

2.キャッシュレス決済導入が必要な背景
キャッシュレス決済の導入に力を入れる大きな理由は、外国人旅行者に対する決済手段の提供と人手不足への対応、そして窃盗なども含めた不正な資金の流通防止である。先ほど見ていただいた通り、海外ではキャッシュレス決済の浸透率が高くなっており、両替等の手間を考えてもキャッシュレスによる決済方法を導入したほうが外国人旅行者にとっては利便性が高いと言える。また世界的な働き手不足・人手不足の中、小売業・サービス業にとっては少しでもオペレーションの量を減らすことが課題となっている。その中で代金の受け取り、金額の確認、お釣りの受け渡しなど、キャッシュレス決済によりかなりオペレーションを減らすことが期待されている。

3.キャッシュレス決済の分類
キャッシュレス決済をハード面から分類すると大きく3つにわけることができる。一つは従来からの決済手段であるクレジットカードを代表とする接触型カードだ。これにはデビットカードなども含まれるが、世界中で広く使うことができるため、幅広い顧客層への対応が可能だが、店側にとっては専用端末の設置費用や決済手数料がかかるというデメリットもある。もう一つはFeliCa技術を使った非接触型カードである。日本では電子マネーとも呼ばれSuicaやPASMOなどの交通系カードを中心に広く普及しており、プリペイド方式のものやiD・QUICPayなどクレジットカードと結びついてポストペイ方式を採用しているものもある。三つめはLINEペイなどのQRコード決済である。国内での普及率はそこまで高くないが、中国ではウィ―チャットペイやアリペイなどで使われている。

4.キャッシュレス決済の今後
今かなりのスピードで広がりを見せているのが三つ目のQRコードを用いた決済である。中国からの観光客用の決済手段としてウィ―チャットペイやアリペイでの決済や、仮想通貨による決済などができる店舗も増えてきている。店舗側にとってのQRコード決済の導入メリットは、もちろん多様な顧客層を取り込むことができることもあるが、コストの面からも他のキャッシュレス決済手段に比べて有利な点が多い。クレジットカードは専用の読み取り端末を設置しなければならずそのコストが必要だ。さらに決済のたびに料金の数%をカード会社(正確には加盟店契約会社)に支払わなければならず、カード決済には登場人物が多いためにかかる手数料も大きい。初期費用に加えランニングコストも大きいためにクレジットカード決済を導入しない店舗も多い。そのため、政府はクレジットカードの使用手数料の引き下げ要請を考えているという報道が一部で出ているほどだ。電子マネー決済の場合はクレジットカードほどではないが初期費用と使用手数料が発生する。そして、QRコードの場合はQRコードを読み取る端末、つまりスマホやタブレット端末があればよく、初期費用なしで導入できることも多い。ランニングコストについても電子マネー決済と同様で使用手数料が発生するが比較的安価な料金となっている。QRコード決済市場には先に紹介したLINEや楽天、メルカリをはじめとするIT企業が参入し始めており、手数料の安さとともに独自の経済圏を築き上げようと力を入れている。最近はUSEN-NEXTなどでタブレットPOSレジなど簡易でカジュアルなレジを導入している場合も多いが、そのような場合でもQRコード決済は簡単に導入することができる。中国でド田舎の駄菓子屋のようなところでもQRコード端末が置かれているという話をよく聞くが、日本でも今後キャッシュレス決済の導入は避けられないだろう。

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