特集) 官民で広がる飲食店支援の輪

新型コロナウイルスの影響で、倒産した企業は全国で100社を突破

世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。主要国が迅速で大規模な危機対応策を講じる中、安倍晋三首相が、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発令したのが4月7日。それ以降、不要不急の外出自粛が要請され、飲食店の経営状況はいっそう厳しくなった。「緊急事態宣言」発令以前も、飲食店は従業員のマスク着用、手洗い、アルコール除菌、客席間隔の調整など感染対策に取り組んでいた。店内営業をやめてテイクアウトにシフトチェンジを図る店も多かった。こうした自己努力をしていたにもかかわらず、「緊急事態宣言」発令により、来客数や売上減少に拍車がかかり、資金繰りに苦しむところが急増している。

 

 

◀コロナ騒動前は外国人で賑わっていた新宿の思い出横丁も、「緊急事態宣言」以降、多くの店舗がシャッターを下ろしている。

 

 

 

 

 

 

◀店舗の前には臨時休業を知らせる張り紙が貼られている

 

 

帝国データバンクによると、4月27日まで、新型コロナウイルスの影響で倒産した企業は全国で100社に上る。その業種別の内訳はホテルや旅館などが最も多い21社、居酒屋やレストランなどの飲食店が15社、婦人服や靴、雑貨店などアパレル関係が10社という順だ。同社では「緊急事態宣言で外出が抑えられたことから消費の低迷が続いていて、1日当たりの倒産件数も増えている。資金繰り支援が遅れれば倒産する企業は、さらに増加するおそれがある」と今後を危惧している。宿泊業や飲食業が苦しいのは、インバウンド(訪日客)の減少が大きな要因とされ、この状況が長期化すれば、倒産数はさらに増えるのは間違いないだろう。

民間企業や有志たちの間で広がる先払いシステムは、飲食店を救う一助になるのか

そんな流れの中で、飲食店向けのプラットフォームサービスを提供する企業が飲食店支援に乗り出している。アプリを通じて食事をごちそうできるサービス「ごちめし」を展開しているGigi(ジジ)株式会社(本社:福岡県福岡市中央区)は、「ごちめし」の機能を利用した「さきめし」と題した新サービスをスタートさせた。コロナショックによる外出の自粛などで今は行けないお気に入りのお店に、「後で食べに行くよ!」という応援の気持ちをこめて食事のチケットを先に購入して、収束後に食べにいこう、という活動を支援するサービスだ。

ごちめし事務局の河野亜美氏は「3月初旬と比較すると登録店舗数は2300件以上、ごち件数(前売り利用件数)も22,000件を超えました(いずれも5月7日時点)」という。エンドユーザーから「コロナの影響で飲食店が大変ななか、応援したいお店を応援できてうれしい」といった声が多数寄せられており、苦しむ飲食店を応援したいムードが広がっていることがうかがえる。同様に食券前売りサービス「みらい食券」を運営するPREO DESIGN合同会社(本社:熊本県熊本市)は、熊本県内の自治体や商工団体、銀行などと連携し、「SAVE THE EATS KUMAMOTO」プロジェクトを4月28日にスタートさせ、飲食店支援に乗り出すことを発表した。また、こうした前売り券サービスを草の根運動的に取り組むグループもある。「コロナに負けない藤沢の店たち」もそのひとつだ。タウンニュースによると、実行委員が配布した共通食事券(500円×100枚)を参加店が販売。食事券はコロナ収束後、会計総額の半分まで利用できる。店側はすぐに5万円分の現金収入を得ることができ、コロナ後にもう一度客と接点を持つことができるという仕組みである。こうした先払いシステムは、当座の運転資金をプールするには有効な手段であるとともに、顧客との結びつきを強める良い機会になるだろう。

 

 

 

 

 

 

◀緊急事態宣言以降、注目が集まっている「さきめし」。

 

 

 

国や自治体の支援を活用する

 

 

 

 

 

◀法人は200万円、個人事業主は100万円を上限に支給される「持続化給付金」(「経済産業省」ホームページより)。

 

 

 

 

◀東京都をはじめ多くの自治体が支援に乗り出している(「東京と中小企業振興公社」ホームページより)。

 

 

国や自治体の支援策の対応の遅れを非難する声も少なくないが、国や自治体もただ手をこまねいているだけではない。経済産業省は新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業者に対して「持続化給付金」を給付。持続化給付金の特徴は以下の通り。
(1)法人は200万円、個人事業主は100万円を上限に支給が行われる
(2)申請には、法人も個人事業主も「前年度(分)の確定申告書の控え」が必要
(3)申請は、原則としてインターネットを通じて行う
(4)「給付」の名のとおり、返済する必要がない

一方、国税局も、従来は持ち帰り用の酒類販売に必要だった「酒類小売業免許」に、特別措置として「期限付酒類小売業免許」(有効期限6カ月)を設け、迅速な手続きで希望する飲食店に付与することを決めた。酒類は食事メニューに比べると粗利率が高いので、期間限定とはいえ活用したい制度だ。テイクアウト販売に活路を見出している飲食店にとっては、容器や割箸などの梱包・包装資材、印刷物の製作費などが負担になっているのも事実だ。こうした声に対して、東京都では新たにテイクアウト、宅配、移動販売を開始する際の初期経費を最高100万円まで助成する「業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策 テイクアウト・宅配等を始める方への支援)」を開始した。テイクアウト販売に対しての支援は、鹿児島県、福井県、和歌山県和歌山市、埼玉県所沢市など全国に広がっているので、各自治体のホームページで確認してほしい。

「補助金ポータル」助成金ねっと」 「かんたん助成金ネット」といった専門サイトを利用、国や自治体のホームページなどの一次情報を確認したうえで活用されるのが良いだろう。

続く難局、それでも、より良いサービスを目指して進化していく
今回(新型)コロナウィルス拡大の影響によるサービス業の現場レポートとして主に飲食店にフォーカスして現況を追った。
外食分野に限らず今、観光や美容といったサービス産業の各業態において特に店舗、商業施設の企業やオーナーは大変な状況の中でなんとか乗り越えることを目指し日々努めている。
39県が今回、緊急事態宣言が緩和されたがサービスの現場は従来とは違う風景になるのかもしれない。
店を利用する客の考え方、消費の仕方も変わってくる可能性もある。
それに伴い店舗経営や店内オペレーションのあり方、空間の使い方など様々な点で従来とは違うサービスや経営のスタイルを考える必要も
でてくるであろう。

どうかこの難局を乗り越えてほしい、と、同時にその先のサービスのより良い在り方を見出すのは

店舗の方々のみならず我々含めた各関係者にとっても課題である。

 

◆参考
https://www.asahi.com/articles/ASN4X4K7RN4XULFA00V.html

https://www.jiji.com/jc/article?k=000000006.000054835&g=prt

https://www.townnews.co.jp/0601/2020/05/01/525980.html

 

 

 

 

 

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