インバウンドから見る外食産業  ホスピタリティードットコム編集部《コラム》

訪日外国人の急増、変化が求められる観光や外食の現場。まだまだ訪日外国人対応に遅れをとっている飲食店も少ない現況。今回コラムとしてインバウンドから見る日本の外食産業をテーマにホスピタリティードットコム編集部で議論し以下にまとめてみた。

2015年ごろから、訪日外国人旅行者の増加や爆買いといったインバウンド産業が活況となっていますが、訪日外国人旅行者数が増え始めたのは2013年ごろからです。そして、2016年になり、爆買いの勢いはある程度収まったものの、訪日外国人旅行者数は増加を続けており、年間ベースでは、過去最高の2403万人となりました。

(図1

外食産業もインバウンドの恩恵を受けており、観光庁の統計によると、2015年一年間の、訪日外国人旅行消費額は34771億円でした。そのうち飲食費は6420億円となっており、かなりのインパクトがあることがわかります。前年の2014年の訪日外国人飲食費は、4311億円であったため、2015年の爆買いブームに合わせて飲食費も増加していたことがわかります。また、確報値はまだ出ていませんが、速報ベースでの2016年の訪日外国人の旅行消費額は37476億円となり、過去最高を記録しています。また、消費額における飲食費の割合は、爆買いにより買い物代が大きく増加した2015年にやや減少したものの、ここ数年おおむね20%前後で推移しています。

(図2

2016330日、政府は「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」の中で、新たな観光ビジョンとして「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定し、政府としても積極的に訪日外国人旅行者を受け入れる姿勢を見せています。このビジョンでは、訪日外国人旅行者増加のための施策や、2020年、2030年に目標とする訪日外国人旅行者数、訪日外国人旅行消費額などが定められています。具体的な数字を見てみると、訪日外国人旅行消費額を2020年に8兆円、2030年には15兆円とする目標を掲げています。飲食費について考えると、飲食費は、消費動向やブームに大きく左右されることは少ないと見られ、飲食費に使う割合についてこれまでの20%を維持するものとして先ほどの政府の目標額を計算すると、2020年には16000億円、2030年には3兆円を飲食費として消費されることになります。

(図3)

2016年は、越境ECの広がりもあって減退により爆買いブームが落ち着き、訪日外国人の買い物代が減少した年でした。しかし、訪日外国人が与えるインパクトはまだまだ衰えることなく、今後も一層の拡大が予想されます。特に外国人旅行消費額が増えた要因として重要なのは、リピーターの比率が前年より増えたことではないかと見られています。観光庁のデータでは、2013年から減少を続けていた外国人旅行者数におけるリピーターの比率が、2016年は上昇に転じました。リピーターの消費行動を考えると、家電などの耐久財については2015年までに既に購入しているため、改めて買う必要もなく、その分宿泊料金や飲食費、娯楽サービス費に支出していることが多いようです。訪日外国人旅行者の飲食費を向上させるためには、リピーター比率を向上させるようなサービスを打ち出すことが必要です。訪日外国人旅行者のリピーター比率の向上は、外食業界全体が取り組むべきテーマの一つだということになるのではないでしょうか。

文:ホスピタリティードットコム編集部 志塚 洋介

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