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外食チェーンの値上げの影響と価格戦略




今年に入り、各産業で製品・サービス価格の値上げが発表されている。ヤマトの配送料の値上げなどが大変話題になったが、その他にも、タイヤ価格や製紙価格など幅広く値上げが行われている。背景としては、石油・石炭・鉱物資源・素材・穀物などあらゆるもの原材料の価格が上昇してきていること、人手不足による人件費上昇と言われている。

 外食産業においても同様で、大手チェーンでもガストやすき家、てんや、鳥貴族、日高屋など多くの企業でコスト増による値上げが行われた。外食業界においては、原材料価格・人件費の上昇のほかに、酒税法の改正による影響も大きく、特に280円均一をうたっていた鳥貴族の値上げは消費者からも業界からも注目度が大きかったようだ。 その一方で、串カツ田中のように客単価を下げてその分客数増により売り上げ増を見込んでいるところもある。(ただし、酒税法改正に合わせアルコール類のみ値上げを行っている)

 では、値上げ、値下げによる売り上げに対する影響は現状どうなっているのか、各企業が出している月次の既存店売上高からその効果を考えてみたい。例えば日高屋を運営するハイデイ日高を見てみよう。日高屋では9月から餃子を10円、アルコール類を10円から20円値上げしている。9月の既存店売上高は前期比+3.9%、客単価が前年同月比+1.3%となった。その後10月は週末の天候不順により客数が-1.7%、売上高が-0.2%となっているが、客単価は+1.6%、11月も客単価+2.0%、客数は+0.4%となり、売上高は+2.4%となった。10月を除けば、客単価・客数ともに上昇しており、値上げが良い影響を与えているといってよいだろう。

 鳥貴族はどうであろうか。値上げを実施した10月は確かに客数が鈍っているが、その翌月は客単価・客数ともに上昇し、売上高も+5.3%と大きく上昇している。10月については、値上げによる影響だけではなく前述の天候不順の要因も大きかったと考えられる。

 次にすかいらーくだが、こちらは少し様子が異なる。9月から値上げを実施し、天候不順だった10月に客単価が増加しているものの客数が減少し、売上高も減少というのは鳥貴族と同様だ。しかし、例年通りの天候だった11月、客単価+2.3%に対し客数が-3.4%と大きく減少し、売上高でマイナスになってしまっている。すかいらーくは、コスト削減・人づくり改革のため今年の1月から2月にかけて深夜営業時間短縮を行っており、その影響が-1%程度出ていると発表している。素直に-1%を差し引けば前年同月比ほぼ変わらずといったところだ。ただ、遡ってみてみると、営業時間短縮移行値上げ前までは平均1%程度売上高は上昇している。すかいらーくにおいては値上げの影響による客数減を客単価の上昇で吸収しきれていない可能性がある。これは、すかいらーくの中核ブランドであるガストやジョナサンなど幅広いメニューを扱う総合ファミレスでは、専門性や高度なこだわりなどを求めない分、低価格を求めているというデフレ志向の中にある消費者が主要ターゲットの1つであるが、脱デフレ化・高付加価値化への変化、顧客への浸透が遅れているということなのではないか。このような背景は総合居酒屋の不調さに近いものがあるように感じられる。

 そして、串カツ田中についてだが、こちらはプレミアムフライデーなどに合わせたキャンペーンで客単価の引き下げを継続的に行ってきている。酒税法の改正に合わせ7月にアルコール類のみ値上げを行っているため、その前後の月次売上を載せているが、アルコール類の値上げを行った7月以降も客単価の下落を維持しており、それを客数の増加が補う形となっているため、売上高全体では上昇している。串カツ田中は安価で開業できる店づくりになっていることもあり、簡素な内装になっている。そのため、客単価を下げた分回転率で補うことができるということなのだろう。また、立地的に住宅街に店舗を置いており、子供向けイベントなども多く行っていることから、ファミリー層の取り込みや、前述のファミレスなどからの客足移動の恩恵もありそうだ。

 これまでに見てきた値上げについては、酒税法の改正が発端となっているケースが多く、値上げメニューの中心はアルコール類である。日高屋や鳥貴族の月次データを見る限り、政策的な背景(法改正)からの値上げではあるが、消費者も値上げに対して納得していることがうかがえる。つまり、外食業界では好調な経済情勢を受け、脱デフレへと進み始めたと考えることができる。この流れに逆らって低価格路線を進む場合は、店・ブランドのコンセプト、顧客層などをしっかり把握したうえで、売り上げ増が見込めるかどうかを確認することが必要だろう。

HDC編集部  志塚洋介

更新日: 2018年2月 3日 16:07

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