【特集】 ウィズコロナ時代を生き抜くためのホテル・旅館運営の可能性を探る!

東京オリンピックの延期、インバウンドの消滅、緊急事態宣言での営業自粛など新型コロナウイルスの影響を受け、社会は大きな変革の時を迎えようとしている。近年のインバウンドニーズを見込んでいた宿泊施設では、大打撃を受けており廃業を選択せざるを得ないホテルや旅館が急増している。帝国データバンクによると、今年上半期のホテルや旅館など宿泊業での倒産件数は80件。そのうち新型コロナウイルスの影響を受けての倒産は37件で全体の46.3%と約半数が占められ、負債総額は568億円にも上る。

ホテル・旅館業界も、ただ手をこまねいていたわけではない。一般社団法人日本旅行業協会(JATA)、一般社団法人全国旅行業協会(ANTA)が共同で「旅行業における新型コロナウイルス対応ガイドライン」を設定したのは5月14日だった。

それによると、

(1) 従業員とお客様及びお客様同士との接触をできるだけ避け、対人距離をできるだけ2m(最低1m)確保するよう努める

(2)感染防止のための来店人数の調整(店頭での旅行販売・相談業務、旅行申し込み手続き時等に密にならないように対応)

(3)旅行会社店舗入口及び店舗内の手指の消毒設備の設置

(4)マスクの着用(従業員及びお客様に対する周知)

(5)店舗等の換気

(6) 商業施設内の店舗については、各商業施設のガイドラインに準じた対策の実施

(7)店舗内の定期的な消毒

などを基本原則に感染防止策を比較的に早い段階で実施した。

しかし、世界的にも衛生意識が高いといわれる日本でも、新型コロナウイルスを完全に封じ込めることは残念ながらできていない。これ以上の負担は、ホテルや旅館などの宿泊業の経営を圧迫することになりかねない。

 

◆地域性を生かし独自の宿泊プランで活路を見いだす

そんな状況を打破するべく独自のアイディアで活路を見いだそうとする宿泊施設も増えている。東京都文京区の老舗旅館「鳳明館 」もそのひとつだ。旅館があるエリアは、かつて100軒近くの旅館が集まった旅館街。石川啄木をはじめ名だたる文豪が下宿・投宿し、、執筆活動をしていたエリアだ。そんな地域の特性を生かし、宿泊者が“自分も文豪になったような気分”を味わえる「文豪宿泊プラン」を企画。宿泊客は部屋にこもって執筆作業を行うことを想定し、編集者役のスタッフが希望時間に進捗具合を確かめる電話を入れたり、レトロな文机のレンタルができたり、編集者に外から見張られる体験ができるオプションなどもある。料金は日帰り1名1室6000円、2~3名1室5000円、1泊2日1名1室8000円、2~3名1室7000円。テスト販売以降、第三弾までほぼ即日完売するほどの人気だ。ちなみに都民は500円割引価格で利用できる。(※宿泊料金などの金額は今後の状況次第で変更の可能性があります)。

「テスト期間中は文京区在住のお客様がご来館し『近所だから泊まるキッカケがなかったが、これが泊まるキッカケになった』との声をいただきまして、近隣の方のデイユースや宿泊に可能性を感じました」と語るのは、同企画を運営する鳳鳴館社外企画営業、八十介の海津智子さん。

利用客のほとんどが首都圏在住者で、なかでも20~30代の女性からの支持が高いという。今後も同プランに加えて「旅館喫茶ホウメイカン」「缶詰サスペンス湯けむりツアー」などユニークな独自プランを実施していく方針だという。

「感染防止対策を取りながら、お客様に共感を覚えていただけるような企画を実施し、この状況を乗りこえたいと思っています」

 

◆未来の宿泊券を売ることで、旅館・ホテル業界を支援

コロナ禍に苦しむ旅館・ホテル業界に支援の手を伸ばす動きもある。ホテル予約プラットフォームを運営する㈱CHILLNN(京都府京都市)の新サービス「未来に泊まれる宿泊券」もそのひとつだ。登録されたホテルや旅館から宿泊したい施設を選び宿泊券を購入する仕組みだ。予約といっても予約日が決まっているのではなく、あくまでいつか宿泊するための“未来の宿泊券”だ。利用者は宿泊券を購入することで宿泊施設を応援することができ、宿泊施設側は、将来的な顧客の確保が見込めるとともに、当面の資金を確保できるというメリットがある。

「コロナ禍にあえぐ日本全国の旅館やホテルを“未来の宿泊券”を購入することで支援できないかという気持ちからスタートしました」と語るのは同社の田中幹人さん。開発を進めていた自社予約プラットフォームの一部機能を活用することで、驚異的なスピードで実現するに至ったという。

「旅館やホテルからは、『コロナ禍というタイミングでこういう支援をしてくれるのは本当に助かります』という声があり、エンドユーザーからは『応援している宿泊施設が掲載されていることがうれしい』という声をたくさんいただきました」

なかには「この状況下で、新しいことに挑戦する御社の姿勢に勇気づけられた」と同社の姿勢や行動力を称賛する声もあったという。北海道から沖縄まで、老舗旅館、個人経営の古民家旅館など全国300件もの施設が最盛期には登録されたことでも人気の程がうかがえる。同サービスは、単に宿泊券の予約を代行するだけではなく、TwitterなどのSNSを使い、登録施設の情報発信を行っている。

「これまでSNSを積極的に活用されていなかった宿泊施設からは、『今まで想定していなかったお客様から反応があった』と驚きと喜びの声が届いています」

同社では、この夏「本と夏の逃避行」と題した新たな企画をスタートさせた。同社社員が選んだオススメの文庫本と、その本の世界をより深く味わえる宿泊施設を組み合わせたプランで、好みの本から宿泊施設を選ぶというユニークな試みだ。同社はホテル業界全体でコロナ危機を乗りこえられるようなサービスを、これからもどんどん企画したいという。

 

◆ウィズコロナ時代のために、今できることを考える

収束の兆しさえなかなか見えない新型コロナウィルス。今回取り上げたように、 宿泊業を運営する企業、オーナーも厳しい状況を打破するべく日々努めている。政府が前倒ししてまでスタートさせた「GoToトラベル」も、東京都が対象から除外されたことによる混乱が続き、その効果には疑問符をつける声が大きい。

例年、帰省客で賑わうお盆休み期間中も、交通機関は激しい混雑がなかった。新型コロナウィルスの感染拡大を懸念して、県境を越えての移動を多くの人が自粛したためと思われる。新型コロナウィルスが収束しない限り、この傾向を続くだろう。今回、ピックアップした事例以外にも、テレワーク需要を見込んで、客室からベッドを撤去したホテルや、地元客優先プランを打ち出した旅館なども増えている。ウィズコロナ時代は、宿泊業界とって厳しい時代になるものと予測されるが、ただ手をこまねいていては、この危機を乗りこえられない。業界内はもちろん、必要とあらば業界外とのタッグを視野に入れて未来を見据えた対策を取ることが必要なのではないだろうか。

 

 

 

▲「文豪缶詰プラン」の特設サイト。今後の実施日程など予定の他、WEB予約も可能。

▲石川啄木をはじめ多くの文豪たちに愛された本郷という街の特性を生かしたプラン。地元ユースの可能性を広げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲「未来に泊まれる宿泊券を販売することで、旅館・ホテル業界を応援したい」という想いからスタートしたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲ホームページやSNSを使用して、登録されたホテル・旅館をアピール。そのおかげで新たな顧客が生まれているという。

 

 

文豪宿泊プラン

https://www.homeikan.com/bungo-202006

 

未来に泊まれる宿泊券

https://www.chillnn.com/

 

本と夏の逃避行

https://note.com/lng/n/ne228aea53c53

 

 

 

 

 

※参考資料

https://www.zaikei.co.jp/article/20200804/579055.html

 

 

 

 

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